こちらの鉄瓶は、山形県の山形鋳物。
山形鋳物の特長は、他の産地に比べて薄い作りにあり、その肉厚は約3mmといいます。同じ鉄瓶でも、薄造りのものはやはり軽いです。
型を作る際に使う粘土や砂が良質で、鉄瓶作りに非常に適しているため、鋳物が発展した歴史があります。また、この鉄瓶の質感も粘土や砂が影響していて、山形鋳物ならでは。
先にも書きましたが、素材は全て鉄だけで、ホーローやエナメル加工などはしていません。長く作られ、使われてきた鉄瓶そのものです。
産地や職人にもよりますが、半分は機械工程という鉄瓶もあると言われますが、この鉄瓶は型に対して1点ずつ製作しています。そのため、生産量は少なく、生産が追いついていない状況が続いていて、量産はできません。
一つ一つの鉄瓶の形が作られた後、800度前後で素焼きを行なっています。その後、漆の焼き付け仕上げをしております。こうすることで酸化皮膜ができ、金気止めがされます。
こちらの「面取無地」は、内側に刷毛でミネラル分のカルシウムが塗られています。これはあくまで白いお化粧です。成分はカルシウムですし、使用に全く影響はございません。
これに加え、鉄瓶は使うほどに中に、水のカルシウムやミネラル分が付着した湯垢で膜がはられ、鉄瓶内部を強く保つ膜の働きをします。職人さん曰く、これがお湯のうまみの元にもなるのだそうです。使い続けるうちに強くなるところにも、鉄瓶の面白さがあります。