第2弾の日本の民具紹介は「長火鉢(ながひばち)」です。
こちらも機能と気の利いた知恵がぎゅっと詰まったお気に入り民具。
先日の三重への旅で実物と出会う事ができたので、ご紹介します。
(関宿町家資料館にて)
長火鉢、初めて聞くという方も多いはず。
写真はこちらです。
名前の通り、火鉢です。
まずは火鉢の歴史から。
素材、形ともにいろいろな種類がありますが、容器の中に灰を入れて、炭火を燃やして暖をとる暖房器具ですね。
火桶(ひおけ)、火櫃(ひびつ)なども同じ仲間です。
火桶は木製の曲げ物、刳り物の容器、火櫃は木製の方形の容器、火鉢は金属もしくは陶製で円形のものを指すという分類はあるらしいのですが、前回の箱階段と同様そのあたりはごちゃごちゃのようです。
歴史的には火桶、火櫃などの方が古いです。
火鉢が出て来たのが江戸時代のはじめで、金属製の鉢型だったよう。
それから、素材、形ともにいろいろなものが生まれてきました。
そのうちの1つで、私が最も気になる火鉢がこの長火鉢。
長火鉢のポイントはこれら
●素材は木、形は名前の通り長方形
素材は陶製のものもあったと書きましたが、陶製だと落としがいらなくて簡単なかわりに、熱くなり過ぎるため、底に木製台などをつけることがあったようです。
木はその点落としをつければ問題なく熱を遮断してそのまま使えます。
●湯沸かし
火鉢の中の銅壷(どうこ)で、湯を沸かしたり、五徳を入れて鉄瓶をかけて、湯が足りるようにしていました
●抽斗
長火鉢の下部分には抽斗がついています。
火鉢の熱や乾燥を利用して、乾燥器として海苔や煙草を入れていたらしいです。
もちろん、私が一番好きなのはここです。
海苔・煙草はきっと下写真の右下の抽斗あたりに入れたのでしょうか。
乾燥を防ぐ密封容器もない時代に、必要から生まれた道具。
既にある火鉢の熱と乾燥の「ついで」を乾燥器として利用して解決した先人たちの知恵、お見事です。
「ついで」というか「一石二鳥」、スマートですね。
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