みんなのどうぐ初めての、東京以外での開催でした。
今回は山形県山形市で、テーマは打刃物。
(企画概要はこちら)
漆器や木の器とは少し流れが違い、3回構成。
1回目に素材と技術をみっちり学び、2回目で企画会議を行い、3回目は完成お披露目会。
先週末に終えた1回目のレポートです。
今回の会場は、製作をお願いする職人の島田さんの工場兼店舗、「島田刃物製作所」
山形駅から車で10分ほど移動したところにあります。
まずは、工場の隣の店舗スペースで、職人の島田さんから打刃物のお話です。
資料と実物サンプルを使いながら、山形打刃物の歴史、打刃物や刃物の知識を教えていただきました。
料理をする方は毎日使う包丁でも、なかなか深く知る機会はありません。
刃物の世界は、非常に深く面白い世界でした。
鋼・鉄・ステンレスのこと、それぞれの中でも、素材の純度や炭素含有量により、細かく分類されること。
また、見た目は同じ包丁でも、一点一点職人が打って鍛える打刃物と、量産型の刃物は大きく異なり、別物といえます。
生産量とスピードはもちろんですが、その製法上の違いから、刃の強さまでもが違ってきます。
もちろん、刃が強いと、手入れをしながら使えば、長く使い続けることにつながります。
量産品が悪いということはもちろんありませんが、形が同じでも、違うものである。
これは、様々な職人さんとお話をして聞けば聞くほど、どのものづくりにも共通して言えることのようです。
この写真は、打刃物の製法により、「包丁のできるまで」
これだけでも、いかに打たれ鍛えられながら包丁が完成するかがイメージできます。
次は店舗の裏の工場へ移動し、実際の作業を見せていただきます。
手ぬぐいを頭にぎゅっと締めて炉の前に立つと、いつもの優しい島田さんの表情が一変します。
炉で熱し、地金に鋼を付ける鍛接、包丁の先の形をつくり、鍛錬します。(いくつかの製品と工程に分けて、見せてくださいました)
鋼を熱し、ハンマーで叩くことは、素材の不純物を外部に放出し、さらに素地を細かく整えていくことに繋がります。
これにより、刃物が強くなるのです。
金属を叩いているのは形を整えているだけではなく、その名の通り、「鍛える」目的を果たしています。
ここからは次の工程へ。
だんだんと、おなじみの包丁の形に近づいてきました。
実際の製品作りは、様々な工程を並行して進めながらの作業になるため、全行程を一度に見ることは出来ませんが、大まかな流れをじっくり見させていただきました。
こんなに間近で鍛冶仕事を見られる機会は貴重で、主催の企画メンバーも大興奮でした。
ここからは研ぎ講習。
砥石の種類、研ぐときのポイント、刃物の種類によって異なる研ぎ方(家庭用のものは両刃でほとんど同じです)。
一番下の写真は、実際に、以前島田刃物店で購入されて使い続けていらっしゃり、お持ちいただいた参加者の方の包丁を研ぎながら。
ポイントは教えていただきましたが、これはもう、回数と時間を重ねて身体で覚えるしかないとのこと。
今回の刃物が完成したら、私も研ぎデビューをしようと思います。
先にも書いたように、刃物には、このような打刃物と、いわゆる量産タイプの抜き刃物があります。
その分類の他、和包丁や洋包丁、刃の素材、柄、刃の形など、種類は様々。
以前、島田さんの包丁を購入してから使っていましたが、感じていた切れ味の違いには、ちゃんと理由がありました。
知れば知るほどに面白い刃物の世界。
書ききれないほどあるので、いくつか写真付きでお伝えできることをご紹介します。
こちらは柄の部分の木材。
今回は、島田さんが柄の部分も製作していただけます。
これも、全ての工程をこなせる島田さんとの取組みならではのこと。打刃物の職人でも、柄の製作はしない方も多いようです。
写真は朴の木ですが、もう少し赤いエンジュも今回使用します。2種類からお選びいただける予定です。
ちょうど翌週にたたら祭りが行われるタイミングのため、古い鞴(ふいご)を出してくださっていました。(鞴とは、火力を高めるための送風装置)
普段は見られない、触れない貴重なもの。火を起こして、実際にふいごを使わせていただきました。
説明が長くなるので割愛しますが、シンプルながらも効率的、無駄のない、素晴らしい構造で、参加者の皆さんも鞴に釘付けでした。
なかなか実際の仕事場を見ることができない打刃物の世界ですが、島田さんのご協力により、みっちりと学ぶことが出来ました。
次の2回目は11月開催。
今回、量産品の刃物とは違う、打刃物の特長を学びました。
これをベースに、今回のテーマである「毎日使える小さな包丁」を考えます。
どんな食卓や食事のシーンで包丁を使うのか、2本目として使う小さな包丁はどんなときに、何を切るのに使いたいか。
今は同時進行で長野県の松本でもみんなのどうぐを開催していますが、長野とは違う、山形の食卓が見えてくるかもしれません。
参加者の皆さんと一緒に、毎日の暮らしをイメージしながら、製品企画をします。
次回のレポートも楽しみにお待ち下さいませ。
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