藍染め 〜その2. 藍釜と染液〜
先日の記事でご紹介した、藍染職人さんは、坂由香里さんという若い女性の染め職人。 単身徳島に渡り、染め所でみっちり修行を積まれた職人さんです。 今は高尾に染めご自身の工房を構えられており、先日はその工房にお邪魔したのでした。 藍染めについて、私も勉強中ですが、少しずつお伝えしたいと思います。 今日は藍釜とその中身について。 藍釜。 かなり大きいです、だいたい200リットルくらいの桶です。 この中で、藍染の染液をつくります。 「藍を建てる」といわれます。 天然藍なので、それはまさに生き物です。 気温だったり、混ぜて空気を入れたり、まさに「育てる」。 この藍染の染液だけど、まず、一体何からできているの? という疑問。 藍という植物で、それを発酵させて、というのは何となくわかるけれど、 なかなかイメージが浮かばないと思います。 この染液の主役は、「蒅(すくも)」と呼ばれるもの。 藍の葉を発酵・熟成させたものです。 まず、こちらが乾燥した藍。なかなか見られません。 これを発酵・熟成させて、染料となる状態まで進化させたもの。 藍から蒅(すくも)に進化します。 この蒅(すくも)に、灰汁、ふすま(小麦)などを合わせて、染液をつくるのです。 材料を見ての通り、全く化学的なものは入っていません。 また、天然藍は生きているだけあって、この染液との関係は、まさに「対話」。 目で見て、香りを嗅ぎ、ときには舐めて味を見て(!)、状態を判断するのだそうです。 職人さん自らが舐められるという時点で、本当に自然に寄り添った、無駄やごまかしの無いものづくりというのを感じます。 そして、こういった「対話」の現場を見ると、月並みな言い方ですが、職人さんの藍への敬意と愛情を感じます。 例えば木工の職人さんとお話ししていてもそうでしたが、その材料を生き物とし、敬意を持って正面から向き合っていらっしゃいます。 一つのものができる前には、長い時間と目に見えない手間と技術が込められています。 特に、藍や蒅、木や麻など、その天然の素材が生まれ育ち、道具として使えるように乾燥したり、発酵させたり、撚ったり、と考えると、大げさでなく本当に長い道のりです。 今は「ファスト」スピードで、安くて手頃なものが求められる時代ではありますが、こういった仕事やものとの付き合い方もまた素敵だなと改めて思います。...